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解説:KIRについて

概要

KIRリガンドミスマッチに基づいた移植戦略は、AML患者に対してのNK細胞の同種抗原反応性により、再発、GvHD、予後に関してより良い結果をもたらすことがあります(Yabeら)。また、GvHDリスクにも関係します(Morishimaら)。

KIRリガンドはHLA-A,B,CのKIR拘束力のあるエピトープを決定するアミノ酸配列に基づいた4つのカテゴリへグループ化することができる分子です。
HLA-CアリルはC1またはC2というグループに全て表現され、殆どのHLA-BアリルはBw4またはBw6のいずれかに分類され、HLA-Aの一部にもA3,A11,Bw4に分類することができます。
下記の表は、KIRリガンドマッチメーカーがどのようにこれらのグループを定義するか示します。

(KIRリガンドミスマッチによりGVL効果は高まりますが、重症GvHDのリスクも高まります。ATGを含むプロトコールの採用が推奨されます)

※Toshio Yabe et al: Donor killer immunoglobulin-like receptor (KIR) genotype-patient cognate KIR ligand combination and anti-thymocyte globulin pre-administration are critical factors in outcome of HLA-C-KIR ligand mismatched T cell-replete unrelated bone marrow transplantation. BBMT 14:75-87 (2008)

Locus Motif 77 80
HLA-A A3 D (Aspartic acid) T (Threonine)
HLA-A A11 D (Aspartic acid) T (Threonine)
HLA-A A24(Bw4) N (Asparagine) I (Isoleucine )
HLA-B Bw4 N (Asparagine) I (Isoleucine )
HLA-B Bw4 N (Asparagine) T (Threonine)
HLA-B Bw4 D (Aspartic acid) T (Threonine)
HLA-B Bw4 S (Serine) T (Threonine)
HLA-B Bw6 G (Glycine) N (Asparagine)
HLA-B Bw6 S (Serine) N (Asparagine)
HLA-B B46(C1) S (Serine) N (Asparagine)
HLA-C C1 S (Serine) N (Asparagine)
HLA-C C2 N (Asparagine) K (Lysine)

※ HLA-A*24:04,HLA-B*13:01,HLA-B*13:02,B*27:08はBw4リガンドではありません(Leung,W. et al.)

KIRとは

最近進化したIg様細胞外ドメインを持つ受容体の多遺伝子族に属します。霊長類では、典型的なMHCクラスI分子(HLA-A, -B, -C)と非典型的なHLA-Gの両方に対する主要な受容体です。(特定のHLAサブタイプに特異的なKIRもあります。)

CD8陽性T細胞は、細胞膜上に発現したMHCクラスI分子と抗原を認識し、活性化します。そしてその抗原を発現している細胞、例えばウイルス感染細胞やがん細胞を傷害するようになります(細胞障害性T細胞)。
CD8陽性T細胞は、自己と異なるMHC分子を異物と見なし攻撃します。

また、MHCクラスI分子は、NK細胞の細胞傷害活性を抑制する働きももちます。
NK細胞は細胞表面にKIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体 killer cell immunoglobulin-like receptor )とよばれる受容体を持っており、このKIRが古典的MHCクラスI分子、あるいはヒト非古典的MHCクラスI分子のうちHLA-Gを認識すると、NK細胞はその細胞を傷害しなくなります。
またヒト非古典的MHCクラスI分子であるHLA-Eは、NK細胞がもつ受容体のひとつであるNKG2A (natural killer group 2A) を介してNK細胞の傷害活性を抑制します。
逆にNK細胞はMHCクラスI分子を持たない細胞を攻撃します(Missing Self説)。

つまり、MHCクラスI分子は自己と他者を区別する標識であり、自己のCD8陽性T細胞に抗原を提示して病原体や癌などを排除しつつ、NK細胞の攻撃から身を守る働きをしています。

KIRには多型が存在し、細胞外ドメインを2個持っているものを2D、3個持っているものを3Dと名づけられています。また、細胞内ドメインの長によってもLong(L)、Short(S)とそれぞれ分けられます。機能も活性型と抑制型に分かれており、それぞれの機能を次の表に記します。

NKレセプターとそのKIRリガンド
レセプター 機能 KIRリガンド
2DL1 抑制型 HLA-C(C2)
2DL2 抑制型 HLA-C(C1)
2DL3 抑制型 HLA-C(C1)
2DL4 活性型 HLA-G?
2DL5
3DL1 抑制型 Bw4,一部のHLA-A
3DL2 抑制型 HLA-A3,A11
3DL3
2DS1 活性型 HLA-C(C2)
2DS2 活性型 HLA-C(C1)
2DS3 活性型 HLA-C(C2)
2DS4 活性型 一部のHLA-Cw4,A11
2DS5 活性型
3DS1 活性型

(?=未解明)

HLAのタイプに基づいて、 KIRリガンドとのレパートリーを予測することができます。KIRリガンドとHLAの対応表を次に記します。

KIRリガンドとHLAの対応表
HLA-A HLA-B※ HLA-C
A3,A11 Bw4 Bw4 C1 C1 C2
3DL2 3DL1 3DL1 2DL2&L3,2DS2 2DL2&L3,2DS2 2DL1,2DS1&S3
A3 A24※ B5 B46 Cw1 Cw2
A11 A32 B27※   Cw7 Cw4
    B37   Cw8 Cw5
    B38   Cw9 Cw6
    B44   Cw10 Cw15
    B49   Cw12 Cw17
    B51   Cw14  
    B52   Cw16  
    B53      
    B57      
    B58      
    B59      
    B77      

※A*24:04,B*13:01,B*13:02,B*27:08は含まない

日本人における、KIRアリルの頻度を次に記します。

Japan Tokyo KIR (N=239)
Line Allele Phenotype
Frequency(%)
1 2DL1 99.6
2 2DL2 13.8
3 2DL3 100
4 2DL4 100
5 2DL5 48.5
6 2DS1 45.6
7 2DS2 14.6
8 2DS3 16.7
9 2DS4 87
10 2DS5 32
11 3DL1 95
12 3DL2 99.2
13 3DL3 100
14 3DS1 46

Risa Miyashita, Naoyuki Tsuchiya, Toshio Yabe, Shigeto Kobayashi, Hiroshi Hashimoto, Shoichi Ozaki, and Katsushi Tokunaga Association of Killer Cell Immunoglobulin-Like Receptor Genotypes With Microscopic Polyangiitis. Arthritis and Rheumatism 2006 54 (3): 992-997

Japan Kyoto KIR (N=239)
Line Allele Phenotype
Frequency(%)
1 2DL1 98.8
2 2DL2 15.4
3 2DL3 98.8
4 2DL4 100
5 2DL5 40.8
6 2DS1 40.8
7 2DS2 15.4
8 2DS3 9.6
9 2DS4 87.1
10 2DS5 34.6
11 3DL1 99.6
12 3DL2 99.6
13 3DL3 100
14 3DS1 44.1

Mogami S, Hasegawa G*, Nakayama I, Asano, M, Hosoda H, Kadono M, Fukui M, Kitagawa Y, Nakano K, Ohta M, Obayashi H, Yoshikawa T, Nakamura N Killer cell immunoglobulin-like receptor genotypes in Japanese patients with type 1 diabetes. Tissue Antigens 2007

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